抄録
関節円板復位療法は,急性非復位性関節円板前方転位症例に対して早期に大幅な開口域の増大と疼痛の改善が得られる可能性があるが,関節円板が復位しない場合があることや疼痛を伴う治療も含まれるため,その適応に考慮が必要である。本研究の目的は,関節円板復位療法の適応を明らかにすることである。ロック期間が3か月未満の非復位性関節円板前方転位症例を対象とし,関節円板復位療法を行って関節円板復位症例と非復位症例に分類した。これら2群の初診時の臨床所見,MRI所見を比較した結果,ロジスティック回帰分析にてロック期間,関節円板前方転位の程度,Joint effusionの有無に有意差を認めた。予測因子の組み合わせモデルでは,関節円板前方転位が軽度の症例,および関節円板前方転位が中等度であってもロック期間が3週間未満かつJoint effusion有りの症例では80%以上の奏効率が得られた。このような症例に対して,初期治療として関節円板復位療法が適応となりえることが示唆された。