日本農村医学会雑誌
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研究報告
低置胎盤症例に対する自己血貯血の検討
廣渡 平輔戸田 繁藤倉 舞黒田 啓太板東 眞有子片山 高明花谷 茉也中村 拓斗傍島 綾藤木 宏美深津 彰子菅沼 貴康鈴木 崇弘
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2021 年 70 巻 4 号 p. 354-359

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抄録
 低置胎盤症例に対する自己血貯血の有用性と問題点を明らかにする目的で本研究を行なった。2013年4月から2018年3月までに当院で分娩となった低置胎盤症例78例を対象として,自己血貯血率,返血率,分娩時出血量,廃棄率等を診療録より収集し後方視的に検討した。58例(74%)に自己血貯血が実施された。貯血量の中央値(範囲)は300mL(300~600mL)であった。貯血群と非貯血群との間に,胎盤前壁付着の有無や胎盤下縁-内子宮口間距離につき有意差はなかった。分娩時出血量の中央値(範囲)は1,183mL(456~3,891mL)であった。2,000mL以上の多量出血例は7例(9%)であり,すべて貯血群であった。貯血例のうち9例(16%)に返血が行なわれた。自己血の廃棄率は血液量ベースで88%,症例ベース(部分的廃棄症例を含む)では91%におよんだ。同種血輸血を施行した症例はなかった。低置胎盤症例において自己血貯血は同種血輸血の回避に有効である可能性が示唆されたが,返血率の高さが明らかとなった。貯血対象をどのようにしぼりこむかが今後の課題と考えられた。
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© 2021 一般社団法人 日本農村医学会
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