日本顎関節学会雑誌
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連載解説
<臨床に有用な基礎知識>顎口腔系にみられるジストニア,ジスキネジア
―その臨床症状・診断・治療―
佐々木 啓一
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2020 年 32 巻 3 号 p. 91-95

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抄録

ジストニアとは筋の緊張の障害であり,ジスキネジアとは運動の障害である。2013年に国際的な専門組織が出したコンセンサスレポートでは「ジストニアは症候群であり,反復性であることが多い異常な運動,姿勢,またはその両者を生じさせる持続的あるいは間欠的な筋収縮を特徴とする運動障害である」と定義される。その特徴は「ジストニア運動は,典型的には定型的かつ捻転性であり,ときには振戦であることもある。ジストニアは,随意的な動きをしようとすると始まったり,増悪したりする。そして筋活動のオーバーフローを伴う」とされている。ジスキネジアはこのような定型的なパターンが認められない異常運動とされ,さまざまな疾患などに伴って発症することも多い。

口腔顔面領域にみられるジストニア・ジスキネジアの代表的なものには,閉口スパズムと開口スパズムなどを示す口顎部ジストニアがある。前者は咬筋の収縮により開口障害をきたし,ときに嚙みしめや歯ぎしりを伴うこともある。後者は外側翼突筋の収縮により閉口障害をきたす。口唇を突出するなどのジストニアもみられる。舌のジストニアでは,多くは舌の不随意な突出を示す。特発性では成人期に発現することが多いが,遺伝性に発現するものもある。眼瞼痙攣を主症状とするメージュ(Meige)症候群では,下顎,舌,喉頭,頸部のジストニアを認める。さらに薬物,特にドーパミン拮抗作用を有する精神神経用薬などの摂取または減量・中止が原因で生じる薬剤性ジストニアでは,口腔顔面の不随意運動の頻度が高く,初発症状として発現することも多い。医薬品の副作用として不随意運動を呈することはまれではなく,臨床上留意しなければならない。

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© 2020 一般社団法人 日本顎関節学会
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