日本顎関節学会雑誌
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連載解説
<臨床に有用な基礎知識>矯正歯科治療と顎関節症について―病態に応じた体系的アプローチ―
谷本 幸太郎
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2021 年 33 巻 3 号 p. 67-71

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抄録

矯正歯科治療を行ううえで,患者が顎関節症を有している場合の対応について,現時点での対処法について考察する。とりわけ,関節円板障害と変形性顎関節症は矯正歯科臨床で遭遇する機会が多いことから,これらに焦点を当て,矯正歯科治療時の対応についてとりまとめた。顎関節の形態変化を伴う病態は,顎顔面形態に重大な影響を及ぼし,不正咬合の発症や進行に関与する可能性がある。そこで,矯正歯科治療を開始する際に顎関節症が疑われる場合にはあらかじめ鑑別診断を行い,病態に配慮した治療計画を立案することが重要である。これにより,治療期間中の顎関節症状の発現や増悪を可及的に予防し,症状が発現した際には適切に対処することが可能となる。また,矯正歯科治療をただちに開始することに高いリスクを伴う顎関節病態を事前に鑑別し,場合によっては開始を遅らせる判断を行うことができる。また,治療開始にあたっては,十分なインフォームドコンセントと慎重な治療計画,治療中の顎関節病態の把握と術後の継続的な経過観察が必要となる。

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© 2021 一般社団法人 日本顎関節学会
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