日本顎関節学会雑誌
Online ISSN : 1884-4308
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33 巻, 3 号
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連載解説
  • 谷本 幸太郎
    2021 年 33 巻 3 号 p. 67-71
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    矯正歯科治療を行ううえで,患者が顎関節症を有している場合の対応について,現時点での対処法について考察する。とりわけ,関節円板障害と変形性顎関節症は矯正歯科臨床で遭遇する機会が多いことから,これらに焦点を当て,矯正歯科治療時の対応についてとりまとめた。顎関節の形態変化を伴う病態は,顎顔面形態に重大な影響を及ぼし,不正咬合の発症や進行に関与する可能性がある。そこで,矯正歯科治療を開始する際に顎関節症が疑われる場合にはあらかじめ鑑別診断を行い,病態に配慮した治療計画を立案することが重要である。これにより,治療期間中の顎関節症状の発現や増悪を可及的に予防し,症状が発現した際には適切に対処することが可能となる。また,矯正歯科治療をただちに開始することに高いリスクを伴う顎関節病態を事前に鑑別し,場合によっては開始を遅らせる判断を行うことができる。また,治療開始にあたっては,十分なインフォームドコンセントと慎重な治療計画,治療中の顎関節病態の把握と術後の継続的な経過観察が必要となる。

依頼論文
  • ―運動器障害の治療における,セルフケアの現在の考え方―
    羽毛田 匡
    2021 年 33 巻 3 号 p. 72-80
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    顎関節症のセルフケアにおける運動療法は,保存的治療法で自然経過を阻害しない方法であり,患者に対する疾患教育とともに治療の第一選択であると考えられる。顎関節症の病態に応じて,筋伸展訓練,関節可動域訓練,筋力増強訓練などが処方される。非復位性関節円板前方転位に対する関節可動域訓練はその作用機序と効果のエビデンスが示されており,日本における診療ガイドラインにおいて推奨されている。咀嚼筋痛障害に対する筋伸展訓練は顎関節症治療の専門家による国際的検討により関節可動域訓練とともに推薦の合意が示されている。訓練の適用に際して,方法,頻度,強度,時間などの用量は患者個々に処方されることとなるが,最適な処方については今後の検討が期待される。加えて,多職種が連携し集学的治療を行うことが国民の健康増進に貢献することとなる。

原著
  • 伊東 宏和, 五十嵐 千浪, 若江 五月, 小樋 香織, 杉﨑 正志, 小林 馨
    2021 年 33 巻 3 号 p. 81-88
    発行日: 2021/12/20
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    目的:関節円板前方転位を伴わない咀嚼筋腱・腱膜過形成症患者を対象とし,再現性のある3DCT像上での咬筋内の腱の本数(Tendon on Masseter Muscle:TMM数)および咬筋前縁の腱の幅(Tendon on Anterior Border of Masseter Muscle:TABMM幅)について,疾患群とコントロール群との間における差を統計学的に検証する。

    方法:本疾患の20名を疾患群,歯科矯正目的で来院した顎関節症でない20名をコントロール群とし,いずれもCTとMRIを行った。計80枚(40例×左右)の3DCT像でTMM数とTABMM幅を歯科医師4名が評価した。評価者内信頼性はκ係数を,評価者間信頼性はChronbachのαを用い,TMM数とTABMM幅について各群の差の検定にはMann-WhitenyのU検定を用いた。

    結果:TMM数のκ係数の最低値は0.871,Chronbachのαは0.917であり,TABMM幅のκ係数の最低値は0.742,Chronbachのαは0.939であった。TMM数はコントロール群で2.0,MMTAH群では3.0であり,TABMM幅はMMTAH群で3.0,コントロール群では1.5,いずれも両群間で有意差を確認した(p<0.01)。

    結論:3DCT像による腱の視覚的評価に高い信頼性を確認した。さらに,疾患群はTMM数が多く,TABMM幅が太かった。

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