日本顎関節学会雑誌
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下顎の運動訓練により片側習慣性顎関節脱臼が改善した一症例
小松 孝雪山口 泰彦会田 英紀大畑 昇
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1999 年 11 巻 2 号 p. 132-135

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抄録

習慣性顎関節脱臼に対する治療法については, 確実な効果を得るためには観血的療法が選択される場合もあるが, 顎関節およびその周囲への外科的侵襲を伴うため, 必ずしもすべての症例に応用できるものではなく, より有効な非観血的療法が必要と考えられる。今回, 片側習慣性顎関節脱臼を有する一症例に対し, 下顎の運動訓練を行った結果, 脱臼の改善が認められたので報告する。
患者は, 大開口時の右側顎関節の脱臼を主訴とした21歳の女性である。左側顎関節に非復位性関節円板が認められ, 下顎頭の運動障害があることから, 大開口時に代償的に反対側下顎頭の過剰運動が生じて脱臼したと考えられた。治療法として, 左側下顎頭授動を目的に, LTデバイスを用いた右側方運動とストレートに開口する下顎の運動訓練を行った結果, 左右下顎頭の運動量の協調, 開口経路のストレート化が認められて脱臼の改善をみた。片側性顎関節脱臼症例の中には, 非脱臼側下顎頭の運動制限が脱臼発症の病因の一つとして存在し, 非脱臼側顎関節への積極的な運動訓練が脱臼の改善に有効である場合が少なくないと考えられた。

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