1995 年 7 巻 2 号 p. 355-364
ラット下顎頭に人為的に過剰運動を連続的に与え, 顎関節滑膜組織に及ぼす影響を光顕的に検索した。その結果, 主として上関節腔前方滑膜組織に病理組織学的変化を認めた。その組織像の変化と推移は以下のようであった。
(1) Hypermobilityという外傷性の刺激に対する滑膜組織の初期の変化は, 滑膜細胞の多層化と滑膜固有層における拡張した血管の増加であった。
(2) 滑膜炎を呈した部分はフィブリン沈着を滑膜表層に認め, また同部で, 部分的に上下滑膜細胞が近接しているところではフィブリン性滑膜癒着を思わせる像を認めた。
(3) フィブリン性滑膜癒着は経時的に線維性滑膜癒着に移行していくことが示唆された。