抄録
顎関節症の診断に質問表は重要な役割を果たしている。しかし, 回答が対象者個人によって行われるため, 症状に対する注目度, 日常生活支障度, 対象者内の症状変動などにより, その記述が影響を受けるという問題点もある。
今回新たに作製した顎関節症症状に関する質問表の妥当性を調査するため, 質問表の結果と臨床診査の一致度を統計学的に検討した。
対象は順正短期大学保健科歯科衛生専攻2年生 (46名) で, まず対象者に今回作製した質問表の質問項目に回答させた。質問表への回答終了後, 回答内容を知らない3人の検者が個別に顎関節雑音, 下顎頭運動の触診, 開口量計測, 顎関節部および顎顔面筋の触診などを行った。
3人の検者の臨床診査結果に対する信頼性は, 顎関節雑音の有無9下顎頭運動制限の有無に関してはKappa値が0.6以上, 開口量計測においては相関係数が0.8以上であった。しかし, 顎関節部および顎顔面筋の圧痛の有無に関してはKappa値が0.6未満であった。
質問表の臨床徴候に対する妥当性では, 最大開口時顎関節痛, 硬固物咀嚼時痛, 大開口困難などの項目において感度>0.70, 特異度>0.75を満たしている項目が認められた。顎関節雑音に関しては特異度が低く, 顎顔面部の疹痛に関する多くの項目では感度が低いという結果であった。