2023 年 21 巻 p. 111-132
社会を批判的に捉え,よりよい社会づくりを志向するクリティカルアプローチの一つとして内容重視の批判的言語教育(Critical Content-Based Instruction: CCBI)が議論されている。本稿は,CCBIに基づく日本語教育実践としてカシオ計算機株式会社と武蔵野美術大学が産学連携で取り組んだプロジェクトを取り上げる。本プロジェクトでは,学生と企業が協働でインクルーシブな社会を創造する活動を取材し,社会課題の解決へ向けたオンラインイベントを開催した。このプロジェクトを通じて学生たちが何をどのように学んだのかを考察することが本稿の目的である。考察から,学生たちは【テーマを「自分ごと」にするプロセス】としてプロジェクトを捉えていることがわかった。そのプロセスには,大きく分けて【過去の自分の経験とテーマを結びつける】段階と【現在の自分の経験を拡張する】段階がある。本稿でそのプロセスの詳細を論じることで,クリティカルアプローチの日本語教育実践には,①他者との出会いのデザイン,②社会実践としてのデザインという2つのデザインの視点が求められることを主張する。