本研究では,非日系コロンビア人日本語教師ルスさんの日本語学習者及び教師としてのライフストーリーを記述・分析した。そして以下の三点について論じた。まず,1990年代のコロンビア日本人移住地の日本語学校では継承語教育から外国語教育へと移行していく中で,教育の担い手と日本語・文化の価値づけが変遷していたことである。次に,コロンビア日本人移住地では日系,非日系といった背景の異なりに関わらず,現地日本語教師が現地社会とそこで生きる人々との関わりを通して,人間教育としての意義を日本語教育に見出していたことである。最後に,ルスさんにとって日本語・文化を学ぶことは,人生の中で得る様々な経験や出会いとその意味づけにより,特別な意味を持つようになったことである。