抄録
通常型膵管癌(膵癌)の質的診断は困難である.今回,気管支肺胞洗浄液(BALF)をモデルに,膵癌症例の膵管洗浄液(PDLF)を採取し検討した.画像で膵癌と診断した18例を対象とし,ERPで擦過細胞診後,ダブルルーメン造影カニューラまたはトリプルルーメンバルーンを狭窄部近傍に留置した.造影ルーメンよりシリンジで生食を極少量ずつ注入し,同時に別のシリンジでワイヤールーメンより弱い陰圧で吸引し,PDLFを回収した.全例でPDLFを採取でき,細胞診は15例陽性(83%)であった.膵炎などの合併症はなかった.PDLFでは擦過に対し変性の少ない細胞を大量に回収できた.膵癌では膵管閉塞による流出障害,膵外分泌機能低下のため,純粋膵液採取に限界がある.PDLFは,生食を灌流することで容易に十分な細胞数の回収を可能にした.また,生食で灌流するため造影剤混入が少なく,細胞損傷が軽微であった.PDLFは細胞を大量に回収でき,膵癌診断の新法として期待される.