【目的】アルコール依存症男性(ア症)では口腔咽喉癌が高頻度で診断される.そこで咽頭の視野を広くする咽頭展開法の手技について内視鏡検診での有用性を検討した.【方法】食道ヨード染色も併用した経口内視鏡検診を施行する40歳以上のア症599例に,顔を前方へと押し出す体位と咽頭観察時に発声やValsalva法を行う手技を用い検診を行った.【結果】輪状後部が開大し下咽頭の視野が広いA群,輪状後部の開大はないが正中で左右の梨状窩が前壁を含めて観察できたB群,内視鏡を左右に振って梨状窩を観察できたC群,観察困難なD群に分類し,それぞれ頻度は58%,18%,19%,5% であった.口底癌1例,舌癌+下咽頭癌1例,中咽頭癌2例,中咽頭癌+下咽頭癌1例,下咽頭癌3例を白色光で診断し,深達度はEP 4例,SEP 4例であり,中下咽頭癌ではA群4例,B群3例であった.食道癌は19例診断され,深達度はEP 10例,LPM/MM 3例,SM 3例,MP以深3例であった.【結論】ア症の口腔咽喉癌検診では咽頭展開法が有用であり食道癌に匹敵する早期の表在癌が高頻度で診断された.