抄録
九州一円のマツ枯死木から,線虫の一種ursaphelenchus sp.が普遍的に検出されることは既報1)のとおりである。本試験では,マツ生立木にBursaphelenchus sp.を接種してその影響を調べたのであるが,接種木の多くが枯死し,本線虫に強い加害性のあることが明らかになった。その概要はつぎのとおりである。
1) マツ生立木に対し線虫を1本あたり約600, 30,000, 1,500,000頭の3段階で接種すると, 30,000頭以上で枯死が起こった。
2) 接種懸濁液中の線虫, Pestalotia菌および両者を取り除いた洗浄濾液を個々にマツに接熱した結果,線虫を含む接種液のみが強い加害性を示した。
3) 線虫をマツの一次枝,主幹地際,根株などの木質部内に有傷接種すると, 60-100%の異常,枯死が起こった。樹皮からの接種では,無傷区は枯れず,有傷区では10本中1本だけが枯れた。しかし,根株の周囲に線虫培養円板を埋めたものは,接種した5本すべてが枯死した。
4) 微害,中害,激害型の3林分で線虫を3月に接種すると,激害型林分では異常木,枯死木の発生時期が早く,枯死率が高かったが,この傾向は6月接種区では認められなかった。
5) 月別の接種では, 2月接種区で50%, 3~8月接種区で70~100%の枯死が起こり, 9~10月の接種では枯死はまだ起こっていない。夏期に線虫を接種されたマツの多くは15~30日で樹脂滲出量が著しく低下し, 2~3か月後に枯死した。なお,接種時期の遅速にかかわりなく,マツの枯死は7月以後に起こった。
6) 本線虫はクロマツ,アカマツ,リュウキュウマツに対して強い加害性を示したが,テーダマツ,バンクスマツ,プンゲンスマツおよびスギ,ヒノキにはまったく加害性を示さなかった。