日本消化器内視鏡学会雑誌
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NSAIDs関連潰瘍合併症の代用マーカーである無症候性内視鏡的消化性潰瘍からの潜在性出血における抗血栓薬の関与
三宅 一昌楠 正典植木 信江名児耶 浩幸小高 康裕進藤 智隆河越 哲郎Katya GUDIS二神 生爾津久井 拓中村 洋坂本 長逸
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2014 年 56 巻 6 号 p. 2019-2027

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抄録

背景および目的:内視鏡的消化性潰瘍は,非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)に関連する消化性潰瘍合併症(顕在性の出血および穿孔)の代用マーカーとして偶発的に発見され,潰瘍合併症の疫学的調査に使用されてきた.たとえ偶発的に発見される無症候性の内視鏡的消化性潰瘍でさえ,抗血栓薬の併用が潜在性出血の原因となっているかもしれない.そこで,今回われわれは,潜在性出血を示唆する小球性貧血が,NSAIDに関連する内視鏡的消化性潰瘍または抗血栓薬の併用とどのような関連があるか検討した.
方法:238人の長期NSAIDを服用する関節リウマチ患者が上部内視鏡検査を行い,その結果から抗血栓薬の併用および内視鏡的消化性潰瘍の有無のパターンの組み合わせから4つのグループに分類(抗血栓薬の併用/内視鏡的消化性潰瘍があり:+または なし:-)した:それぞれ:A,-/-(n=165);B,-/+(n=44);C,+/-(n=25);and D,+/+(n=4).
結果:内視鏡的消化性潰瘍は,48人(20.2%)に認められた.4群間に統計学的な有意な相互作用が見られることを同定した上で,ヘモグロビン(Hb)とmean corpuscular volume(MCV)を潜在性出血の指標として,各グループ間において比較した.HbとMCVはいずれも,A,BおよびC群よりD群において有意に低値であった(Hb:それぞれP<0.01;P<0.05,MCV;それぞれP<0.01またはP<0.05).
結論:抗血栓薬を併用しかつ内視鏡的消化性潰瘍を有する長期NSAID服用者は,顕性出血のエビデンスがなくても,他の長期NSAID服用者と比べ,有意に高度な小球性貧血が認められた.たとえ無症候性の内視鏡的消化性潰瘍であったとしても,抗血栓薬併用時には,潜在性に出血すると考えられた.

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© 2014 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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