抄録
門脈ガス血症(HPVG)と腸管気腫症(PCI)を伴い,遅発性狭窄を来した狭窄型虚血性小腸炎を経験した.症例は82歳,男性.主訴は嘔吐,腹部膨満.初診時にHPVG・PCIを認めたが,腹膜刺激症状がなかったため保存的に治療した.一時的に症状は改善したが,およそ5カ月後に腸閉塞を来した.経肛門的バルーン内視鏡検査で小腸の全周性潰瘍・管状狭窄が観察された.小腸部分切除が行われ,臨床経過や切除標本の病理組織所見より狭窄型虚血性小腸炎と診断した.
小腸病変におけるHPVGの出現は,虚血性変化が粘膜下層以深であることを示唆しており,腸管壊死に至らない場合には遅発性小腸狭窄の発症を念頭に置く必要がある.