2015 年 57 巻 8 号 p. 1603-1608
症例は66歳女性.29歳時にバセドウ病と診断されたが通院は中断していた.浮腫,倦怠感,黄疸を認め受診した.血液検査で汎血球減少と大球性貧血を認めビタミンB12低値から悪性貧血と診断した.原因として,ガストリン高値,抗内因子抗体陽性,上部消化管内視鏡検査で胃底腺領域優位の萎縮性変化を認めたことから自己免疫性胃炎を考えた.ビタミンB12を補充し症状は速やかに軽快した.自己免疫性甲状腺疾患に,長期経過して悪性貧血を伴った多腺性自己免疫症候群3B型と思われた.自己免疫性胃炎は胃癌やカルチノイドの合併頻度が高いことから,自己免疫性甲状腺疾患の患者には上部消化管内視鏡検査を勧め,A型胃炎の有無に注意した観察が望ましい.