抄録
症例は68歳男性.主訴は発熱,下痢.血液検査で炎症反応上昇を,腹部CTで直腸壁肥厚と周囲脂肪織の炎症所見を認め,感染性腸炎として加療を開始するも改善せず.大腸内視鏡検査を施行したところ,上部直腸に限局する全周性の潰瘍を認めた.潰瘍底は小粒状の隆起によって「魚卵様」の所見を呈していた.潰瘍部位の生検組織から封入体像が認められ,免疫染色やサイトメガロウイルス(CMV)抗原血症検査からCMV腸炎と診断.Valganciclovirの投与により軽快した.治療に難渋する腸炎に対し,積極的に内視鏡検査やCMV抗原血症検査を行うことはCMV腸炎の診断に有用である.またこれまで「魚卵様」の内視鏡像を呈した本症の報告はなく,貴重な症例と考え,ここに報告する.