欧米においてBarrett腺癌は急増しているが,本邦では依然まれである.しかし,本邦における逆流性食道炎罹患率は上昇しており,今後,Barrett食道および腺癌の増加が憂慮されている.進行したBarrett腺癌の予後は不良であり,患者予後の改善には内視鏡による早期発見が必要である.本邦ではBarrett食道の大多数がshort segment typeであることから,腺癌病変の多くは内視鏡的観察の難しい食道胃接合部に局在する.よって,その早期発見には観察のコツと高い内視鏡診断能を要する.内視鏡観察の基本は通常観察であるものの,酢酸法やNarrow Band Imaging(NBI)を併用した拡大観察の有用性が確立されつつある.本稿では筆者らの経験と国内外の臨床研究成果に基づき,内視鏡を用いたBarrett腺癌の早期発見に肝要と思われるテクニックと診断体系について,実際の症例を供覧しつつ解説したい.