日本消化器内視鏡学会雑誌
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質の指標としてのスクリーニング上部消化管内視鏡検査時間
河村 卓二 和田 浩典𥔎山 直邦上田 悠揮白川 敦史岡田 雄介真田 香澄中瀬 浩二朗萬代 晃一朗鈴木 安曇釜口 麻衣盛田 篤広西大路 賢一田中 聖人望月 直美宇野 耕治横田 勲小林 正夫安田 健治朗
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2018 年 60 巻 2 号 p. 180-188

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抄録

【背景と目的】無症状の被検者に対する上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy;EGD)の検査時間の意義は確立されていない.今回の検討の目的は,無症状の被検者へのEGDに長い時間を費やす内視鏡医が,より多くの腫瘍性病変を見つけているかを明らかにすることである.

【方法】2010年4月から2015年9月に筆者らの施設で施行されたEGDのデータベースを後ろ向きに検討した.観察時間により内視鏡医を分類するために,生検を施行した症例を除いた平均観察時間を算出し,スタッフ医師を短時間群・中間群・長時間群の3群に分けた.3群間の腫瘍検出割合の差異を多変量解析にて比較した.

【結果】対象期間内に施行した55,786件のEGDのうち,スタッフ医師が無症状の被検者に対して施行した15,763件のEGDを分析した.生検を施行していない13,661件のEGDの平均検査時間は6.2分(範囲:2-18分)であった.カットオフ値を5分と7分に設定すると,4名の内視鏡医が短時間群(平均時間4.4±1.0分),12名の内視鏡医が中間群(平均時間6.1±1.4分),そして4名の内視鏡医が長時間群(平均時間7.8±1.9分)に分類された.短時間群・中間群・長時間群の腫瘍検出割合は,それぞれ0.57%(13/2,288),0.97%(99/10,180),0.94%(31/3,295)であった.多変量解析では,短時間群と比べた中間群・長時間群の腫瘍検出割合のオッズ比は,それぞれ1.90(95% 信頼区間[CI],1.06-3.40),1.89(95% CI,0.98-3.64)であった.

【結論】EGDに適切な検査時間を費やさない内視鏡医は,病変を見逃している可能性がある.

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© 2018 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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