2018 年 60 巻 5 号 p. 1083-1088
症例は29歳男性.腹痛を主訴に近医を受診し,Helicobacter pylori(HP)感染を指摘,除菌療法を施行された.その翌日に症状が増悪し腸炎疑いで当院に緊急入院となった.入院後に下腿の紫斑が出現し,上下部消化管内視鏡検査を施行したところ,食道,胃,十二指腸,回腸,結腸にびらんを認め,IgA血管炎による消化管病変と考えられた.プレドニゾロン内服後は,腹部症状は消失し紫斑も改善した.IgA血管炎の食道病変を内視鏡で観察し得た報告例は少なく貴重な症例と考えられる.またIgA血管炎には消化器症状が先行する例もあり,内視鏡所見は多彩な像を呈することが多いため,IgA血管炎の消化管病変の特徴を認識しておくことが重要と考えられた.