2018 年 60 巻 7 号 p. 1331-1337
大腸内視鏡が左鼠径ヘルニアに嵌入し挿入困難になった3例を経験した.症例はいずれも高齢の男性であった.1例は慎重に抜去を行った後,脱出した腸管を徒手整復手技に準じて還納することで全大腸内視検査が施行可能であったが,その他2例は検査の継続が不可能であった.大腸内視鏡は広く普及している手技であるが,検査中に内視鏡が鼠径ヘルニアに嵌入した報告は極めて少ない.大腸内視鏡検査を行う上で,高齢の男性では陰嚢腫脹を伴う外鼠径ヘルニアの病歴聴取が重要である.大腸内視鏡検査中に予期せず内視鏡が鼠径ヘルニアに嵌入した場合は,一旦手技を中断し,鼠径部痛などの臨床症状の確認を行った後,慎重に抜去するのが望ましい.