日本消化器内視鏡学会雑誌
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本邦データを用いた大腸ポリープ切除後サーベイランスの費用効果分析
関口 正宇 五十嵐 中坂本 琢斎藤 豊江崎 稔松田 尚久
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2019 年 61 巻 10 号 p. 2409-2421

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抄録

【目的】大腸ポリープ切除後の至適サーベイランスに関する推奨は十分に確立しておらず,初回大腸内視鏡で切除されたポリープの結果に基づいたリスク層別サーベイランスの必要性についてもコンセンサスが得られていない.本研究では,費用効果分析を行い,至適な大腸ポリープ切除後サーベイランスプログラムを検討した.

【方法】4つの大腸ポリープ切除後サーベイランスプログラムについて,マルコフモデルを用いた費用効果分析を行った.効果指標には質調整生存年(Quality-adjusted life year:QALY)を用いて,各プログラムの費用対効果と,必要となる内視鏡件数を検討した.モデル内のパラメータは,日本のデータに基づいて設定した.4つのプログラムのうち,2つはポリープ切除後一律1年(プログラム1),3年(プログラム2)に大腸内視鏡を行うリスク層別を伴わないプログラムで,残り2つは,切除されたポリープ結果に基づくリスク層別を伴うサーベイランスプログラムである.プログラム3では「高リスク腺腫」切除後は3年後,「低リスク腺腫」切除後は10年後にサーベイランス大腸内視鏡を施行,プログラム4ではその検査間隔を短くし,各々1,3年後に施行する形で設定した.

【結果】リスク層別サーベイランスプログラム(プログラム3,4)は,リスク層別を伴わないプログラム(プログラム1,2)よりもかかる費用は低く,期待QALYは大きくなる.プログラム3と4の比較では,プログラム4は3よりも期待QALYは大きく(一人当たり23.046QALY),費用は安価であった(一人当たり107,717円).必要となる内視鏡件数は,プログラム4が最も多く,プログラム1,2,3の各々1.2倍,1.5倍,1.6倍必要であった.確率論的感度分析からは,費用対効果に優れる可能性が最も高いのはプログラム4と判断された.

【結論】大腸ポリープ切除後のサーベイランスにおいては,切除されたポリープの結果に基づいたリスク層別を考慮すべきである.日本では比較的短い検査間隔の大腸内視鏡を用いたリスク層別サーベイランスプログラムが効果的で費用対効果に優れる可能性があるが,内視鏡キャパシティとの兼ね合いについてさらなる検証と配慮を要する.

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© 2019 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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