日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
手技の解説
大腸SM癌診療におけるEUS診断のコツ
稲場 勇平 斉藤 裕輔小林 裕杉山 隆治助川 隆士小澤 賢一郎垂石 正樹藤谷 幹浩奥村 利勝
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2019 年 61 巻 5 号 p. 1145-1157

詳細
抄録

大腸T1(SM)癌の深達度診断における超音波内視鏡検査(EUS)診断のコツについて解説した.超音波内視鏡検査は大腸内視鏡検査とは異なり,病変の垂直断面像が得られることにより大腸癌のSM以深への浸潤像を直接観察できる唯一の検査法である.内視鏡検査と同時に施行可能な超音波細径プローブ検査が簡便であり初学者には推奨される.約10%程度の症例で画像そのものが得られない,また屈曲部やハウストラ上の病変では良好な画像を得ることが困難な場合がある.内視鏡であらかじめSM深部浸潤が疑わしい部位を中心にスキャンすることで,また内視鏡画像を見ず,超音波画像を見ながらスキャンを行うことで正診率の向上が得られる.また,病変高6mm以上の隆起型病変においては深部減衰により満足な深達度診断能が得られない場合もあり,低周波プローブ(12または7.5MHz)の併用が有用である.内視鏡摘除か外科手術かの治療法選択における正診率は全体では77.0%(211/274)とさほど高くはないが,T1b癌における深達度正診率はTis・T1a癌に比較して有意に高く(それぞれ87.3%(125/151)vs 69.2%(86/123);p<0.01),特に表面型T1b癌における深達度正診率は隆起型T1b癌に比較して有意に高かった(それぞれ91.4%(53/58)vs 83.3%(50/60);p<0.05).高周波超音波細径プローブ検査(HFUP)は(特に表面型の)T1b癌を疑う病変の深達度診断に有用であると考える.EUSは組織上のSM浸潤距離をよく反映することから,今後の大腸SM深部浸潤(T1b)癌への内視鏡治療の適応拡大に向けて必須の検査法となると考えられる.そのため,消化器内視鏡医は,EUSの手技に精通しておくことが肝要である.

著者関連情報
© 2019 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top