日本消化器内視鏡学会雑誌
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総説
炎症性腸疾患-診断と治療の最前線-
久松 理一
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2019 年 61 巻 8 号 p. 1523-1537

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抄録

原因不明の慢性炎症性疾患である炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease,IBD)はいまだ増加傾向が続いており,長期予後改善を目指した新たな治療戦略が必要である.具体的な治療目標を設定したtreat to target(T2T)に基づく治療戦略の重要性が唱えられている.内視鏡的寛解が標準的な治療目標として設定され,さらに組織学的寛解を治療目標とするべきかの検討も行われている.T2T治療戦略には適切なモニタリングも重要であり,便バイオマーカーであるカルプロテクチンや便潜血定量法が使用可能となった.さらにカプセル内視鏡や小腸バルーン内視鏡の発達により小腸病変雄モニタリングも可能になった.さらにcross sectional imagingも進歩し日常診療の診断・モニタリングツールとして使用されている.治療の面では,5-アミノサリチル酸製剤やブデソニド製剤の選択肢が増え,チオプリン製剤についてはNUDT15遺伝子多型を含めた新たなエビデンスが構築されつつある.さらに抗TNFα抗体製剤の成功によりIBDに対する分子標的治療薬がめざましい勢いで開発されつつある.

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© 2019 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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