【背景】罹病期間の長い潰瘍性大腸炎は大腸癌のリスク因子とされ,このような患者に対してはサーベイランス内視鏡が行われている.今回潰瘍性大腸炎関連腫瘍(大腸癌およびdysplasia)の発生率・リスク因子を明らかにするため解析を行った.
【方法】1979年から2014年の間に東京大学腫瘍外科でサーベイランス内視鏡を行った289人の潰瘍性大腸炎患者を対象とし,腫瘍の累積発生率およびそのリスク因子を調査した.腫瘍発生患者をサーベイランス群と非サーベイランス群に分類し,ステージと全生存率について解析した.
【結果】潰瘍性大腸炎発症後,10・20・30・40年後におけるdysplasiaの累積発生率は3.3・12.1・21.8・29.1%であり,大腸癌の累積発生率は0.7・3.2・5.2・5.2%であった.全大腸炎型では有意に腫瘍発生が多く見られた(P=0.015,hazard ratio,2.96).
【結論】東京大学腫瘍外科におけるサーベイランス内視鏡対象患者の腫瘍発生率およびリスク因子を明らかにした.全大腸炎型は腫瘍のリスク因子であった.