2020 年 62 巻 1 号 p. 15-33
炎症性腸疾患(inflammatoy bowel disease:IBD)の診断において,腸管病変が非典型的所見を示し,潰瘍性大腸炎とCrohn病の鑑別困難症例や両者のいずれにも合致しない診断困難症例が存在する.近年,バルーン内視鏡検査やカプセル内視鏡検査の普及による小腸病変の診断力向上や遺伝診断学の進歩により,IBDおよびIBD類縁疾患診断において新しい知見や疾患概念が報告され,診断体系にも変化が生じている.本稿ではIBD類縁疾患のうち近年,特に注目度が高い疾患として,①腸管ベーチェット病(単純性潰瘍,trisomy 8関連腸炎),②非特異性多発性小腸潰瘍症/chronic enteropathy associated with SLCO2A1 gene(CEAS),③家族性地中海熱遺伝子関連腸炎(familial Mediterranean fever:FMF)について,疾患概念から診断,治療の現状について解説した.