日本消化器内視鏡学会雑誌
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早期胃癌内視鏡的切除に対する本邦ガイドラインの歴史と将来展望
八田 和久後藤田 卓志小池 智幸正宗 淳
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2020 年 62 巻 10 号 p. 2312-2324

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抄録

胃癌治療に対する本邦のガイドラインは,胃癌の治療法についての適正な適応を示すこと,胃癌治療における施設間差を少なくすることなどを目的に2001年に初めて出版された.エビデンスの蓄積と内視鏡的粘膜下層剝離術の発展・普及とともに,早期胃癌内視鏡的切除の適応と根治度基準は拡大していった.だが,現在においてもいくつかの問題が残っている.リンパ節転移を予測するリスクスコアリングシステムeCura systemは,早期胃癌内視鏡的切除の治癒切除基準を満たさない患者(最新のガイドラインでは内視鏡的根治度C-2と表記)における治療方針決定の一助となるが,たとえeCura systemにて高リスクであってもリンパ節郭清を伴う追加外科切除は多くの患者において過剰医療となる可能性がある.だが,非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術+センチネルリンパ節生検のような低侵襲機能温存外科手術によりこの問題を克服できる可能性がある.また,追加外科切除を望まない患者に対する内視鏡的切除+化学療法のようなさらなる低侵襲治療法の確立が望まれる.

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© 2020 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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