日本消化器内視鏡学会雑誌
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大腸内視鏡検査におけるリドカインの腸管蠕動抑制効果:多施設,二重盲検,ランダム化比較試験(動画付き)
根本 大樹鈴木 翔森 英毅勝木 伸一岩城 智之愛澤 正人竹内 洋司浦岡 俊夫松田 知己藤田 朋紀David G. Hewett冨樫 一智
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電子付録

2020 年 62 巻 2 号 p. 210-219

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抄録

【目的】腸管蠕動は大腸内視鏡検査の妨げとなるが,腸管蠕動抑制薬は有害事象引き起こしうる.本研究は,プラセボを対照として,リドカイン局所投与による腸管蠕動抑制効果を評価することを目的とした.

【方法】全国5箇所の専門医療機関で,大腸病変に対する内視鏡治療を要する128名の患者を登録し,大腸内視鏡検査中に2%リドカイン溶液20mlを局所投与する群(LID群64名)または生理食塩水20mlを局所投与する群(NS群64名)に,二重盲検下にランダム化割付けを行った.大腸内視鏡検査中,検査施行医は,割付けられた溶液を撒布チューブにより病変近傍に撒布し,その領域を3分間観察した.主要評価項目は,溶液投与後1,2,3分後での蠕動抑制効果とし,3段階(excellent,fair,poor)で評価した.副次評価項目は,リバウンド収縮および有害事象とした.すべての評価項目はリアルタイムで評価した.血清リドカイン濃度は32名で測定した(LID群16名,NS群16名).

【成績】2群間で患者背景に有意差はなかった.すべての時点において,excellentの割合はNS群よりもLID群で多く,2分後(p=0.02),3分後(p=0.02)で有意差を認めた.LID群では,excellentの割合は2分後で12.5%増加し,3分後でも維持されていた.リバウンド収縮はLID群では発生しなかったが,NS群では15.6%に生じた(p=0.001).LID群で有害事象はなかった.血中リドカイン濃度は,いずれも検出限界値以下であった.

【結論】リドカイン局所投与は大腸内視鏡検査中の腸管蠕動を抑制するための効果的かつ安全な方法である(UMIN000024733).

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© 2020 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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