2021 年 63 巻 10 号 p. 2192-2198
症例は34歳男性.前庭部にびらん様の陥凹を伴う10mm大の隆起性病変を指摘されたが質的診断は困難であった.制酸薬投与後に再評価を行ったところ,narrow band imaging併用拡大観察で明瞭な腫瘍境界内に,不整な微小血管構築像と表面微細構造が確認された.部分的にlight blue crestおよび不整なwhite opaque substanceを認め,腸型分化型癌と診断し内視鏡的粘膜下層剝離術を行った.背景粘膜の内視鏡および組織所見に萎縮・腸上皮化生を認めず,血清H. pylori抗体,便中抗原も陰性であった.最終病理診断は,H. pylori未感染粘膜に発生した腸型分化型胃癌(粘膜内癌)であった.