2021 年 63 巻 11 号 p. 2343-2349
幽門腺腺腫は高齢者の胃体上部から体中部に発生する幽門腺への分化を呈する比較的まれな腫瘍である.症例は78歳男性で上部消化管内視鏡で胃体中部前壁に,境界明瞭な陥凹を伴う粘膜下腫瘍様病変を認めた.陥凹内部には粘液に覆われる大小不同・形状不均一な絨毛状・乳頭状構造を呈する隆起を認めた.内視鏡的粘膜下層剝離術を施行し,病理組織学的に,内反性増殖を示した幽門腺腺腫と診断した.幽門腺腺腫は胃底腺型胃癌と同一のスペクトラムにある低異型度胃型腫瘍の一つとされる.自験例は特異な内視鏡像を呈し,病変の成り立ちと病理組織学的な細胞分化を検討する上で有用な症例であると考える.