2021 年 63 巻 4 号 p. 407-414
症例は62歳男性.嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.腹部造影CT検査と上部消化管内視鏡検査にて後腹膜領域に6cm大の腫瘤性病変とそれに伴う十二指腸狭窄を認めた.十二指腸狭窄を合併した後腹膜血腫と診断し,保存的治療を開始した.後日の造影CT検査で後下膵十二指腸動脈の仮性瘤が疑われたが,血腫の増大はなく保存的加療を継続した.第21病日に血腫はわずかに縮小していたが,十二指腸狭窄が残存していたため内視鏡的バルーン拡張術を施行し,経口摂取を開始した後は経過良好で第34病日に軽快退院した.後腹膜血腫による十二指腸狭窄はまれな病態であり診断に難渋することも多いが,本例においては画像所見にて診断可能であった.保存的に改善しない例の多くは手術が選択されているが,本例においては内視鏡的バルーン拡張術が奏効し手術を回避し得た.