2022 年 64 巻 1 号 p. 70-78
膵管にガイドワイヤーを留置し,乳頭を固定し,胆管末端部の直線化を図って胆管挿管を行う,膵管ガイドワイヤー留置法(PGW法:Pancreatic guidewire法)は挿管困難症例に対するオプションとして臨床の現場で広く用いられている.一方でPGW法を用いても胆管挿管に難渋する症例はよく経験され,“膵管にガイドワイヤーが留置されることで乳頭そのものの可動性を抑えることは少し可能になるが,屈曲の強い乳頭内胆管が完全に直線化しない可能性も十分にあり得る”ことを念頭に胆管挿管に向き合う必要がある.PGW法はあくまでもオプションの一つであり,胆管挿管の成功は膵管ガイドワイヤー留置後の,対峙した乳頭の形態,口側隆起の形状,その症例でとり得るスコープポジション,を踏まえた挿管ストラテジーの構築なくしてはなし得ない.術後膵炎のリスクを常に想定しながら,安全・確実な膵管ガイドワイヤー留置,症例に応じた各種挿管手法の使い分けを,論理的に,かつ愛護的に操る必要がある.