2022 年 64 巻 3 号 p. 249-255
症例は67歳女性.胃穹窿部に約3cm大の粘膜下腫瘍(submucosal tumor,SMT)を指摘され経過観察されていた.定期検査で増大傾向を認めたため,精査予定であったが,心窩部痛と黒色便を認めたため当科へ紹介され入院した.上部消化管内視鏡検査で,胃穹窿部SMTが十二指腸側に脱出している所見を認め,ball valve syndromeと診断した.内視鏡的整復が困難で開腹腫瘍切除術が施行された.病理検査は消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor,GIST)であった.胃穹窿部GISTによるball valve syndromeは比較的稀であり,文献的考察を加え報告した.