日本消化器内視鏡学会雑誌
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欧米と日本における好酸球性食道炎の臨床像の類似点と相違点
石村 典久沖本 英子柴垣 広太郎長野 菜穂子石原 俊治
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2022 年 64 巻 4 号 p. 1048-1061

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抄録

過去20年の間に好酸球性食道炎(eosinophilic esophagitis:EoE)の罹患率および有病率は特に欧米諸国において急激な増加を示しており,日本においても近年,症例数の増加傾向が示されている.しかしながら,欧米と日本におけるEoEの臨床像の類似点および相違点については,これまで十分に評価されていない.現在のEoEの診療ガイドラインでは,食道機能障害に起因する症状および食道上皮における密な好酸球浸潤の存在が含まれている.日本においては,健診の際に偶発的に診断される症例が大半であり,EoEに見られる典型的な内視鏡像を認めるものの無症状の症例にしばしば遭遇する.日本人のEoEの臨床的特徴は欧米人と同様である.日本人に認められる最も頻度の高い症状は嚥下困難であるが,食物嵌頓は非常に稀である.また,内視鏡像では縦走溝が最も頻度の高い所見であるが,食道狭窄や内腔の狭小化は稀である.EoEの治療方針には薬剤,食事療法に加え,食道狭窄を認める際は内視鏡的拡張術が含まれる.日本においてはプロトンポンプ阻害薬単剤で多くの症例で症状および組織学的な改善が認められるが,薬剤や除去食療法などの有効性を検討した前向き無作為化比較試験は行われていない.全体として,日本人と欧米人のEoEの臨床像は同様であるが,日本人の症例の方が疾患の重症度が軽い傾向にあると思われる.今後,遺伝子要因,疾患の自然経過,薬剤や除去食療法の効果に関して欧米人と比較したさらなる検討が必要である.

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© 2022 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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