日本消化器内視鏡学会雑誌
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日本の三次医療機関における組織学的診断のための超音波内視鏡下穿刺吸引法による有害事象:多施設共同後ろ向き研究
菅野 敦 安田 一朗入澤 篤志原 和生蘆田 玲子岩下 拓司竹中 完潟沼 朗生滝川 哲也窪田 賢輔加藤 博也中井 陽介良沢 昭銘北野 雅之伊佐山 浩通鎌田 英紀岡部 義信花田 敬士大坪 公士郎土井 晋平久居 弘幸渋川 悟朗今津 博雄正宗 淳
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2022 年 64 巻 7 号 p. 1371-1385

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抄録

【背景と目的】EUS-FNAは,様々な種類の消化器疾患の病理組織学的診断に用いられている.EUS-FNAによる有害事象がいくつか報告されているが,実際の有害事象の発生に関する実態は不明である.本研究の目的は,病理組織学的診断目的のEUS-FNAに関連する有害事象が発生した症例の現状を明らかにすることである.

【方法】日本の三次医療機関におけるEUS-FNA関連有害事象症例について,臨床データ(基本患者情報,FNAの手技,EUS-FNA関連有害事象の種類,予後など)を後ろ向きに解析した.

【結果】全EUS-FNA症例13,566例のうち,EUS-FNA関連有害事象が発生した合計症例数は234例であった.EUS-FNA関連有害事象の発生率は約1.7%であった.出血症例と膵炎症例が全有害事象のそれぞれ約49.1%と26.5%を占めた.最も一般的な有害事象は出血で,輸血を必要としたのは7例のみであった.神経内分泌腫瘍症例で最も頻度の高かった有害事象は膵炎であった.観察期間中,EUS-FNAによるneedle tract seedingが認められたのは,膵癌症例のわずか約0.1%であった.EUS-FNA関連有害事象による死亡は認められなかった.

【結論】本研究により,病理組織学的診断目的のEUS-FNAに関連する有害事象は,発生率が低く,重症例も少ないことが明らかとなった.

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© 2022 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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