2023 年 65 巻 10 号 p. 2187-2193
症例は65歳男性.維持透析中で炭酸ランタンを内服していた.紹介元のEGDにて胃体下部小彎前壁に発赤調の陥凹病変(病変1)を認め,当院のEGDにて近傍に別病変(病変2)を検出した.背景粘膜はランタン沈着症の診断であった.Proton pump inhibitor内服とランタン休薬により,白色光観察では粘膜の粗造な変化は軽減し,Narrow Band Imaging(NBI)観察では胃癌病変が強調され,範囲診断が容易になっていた.ESDにより2病変を一括切除し,病理組織学的には胃癌病変のランタン沈着は非癌粘膜に比較して軽微であった.ランタン沈着症に同時多発早期胃癌を合併した症例は稀であり,内視鏡所見および病理組織学的所見を理解する上で重要な症例と考えられた.