日本消化器内視鏡学会雑誌
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内視鏡下に採取した膵疾患の膵液および十二指腸液の分子生物学的評価
高野 伸一 深澤 光晴榎本 信幸
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2023 年 65 巻 11 号 p. 2334-2348

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抄録

膵癌をはじめとする多くの膵疾患は予後不良であり,診断法の進歩にもかかわらず前癌病変のリスク層別化や膵囊胞の鑑別は困難なことが多い.診断に苦慮する膵疾患として,膵管内乳頭粘液性腫瘍,粘液性囊胞性腫瘍,漿液性囊胞腺腫,仮性囊胞,貯留囊胞,さらにはSolid pseudopapillary neoplasmsや膵神経内分泌腫瘍などの固形腫瘍の囊胞変性が存在する.膵癌で多くみられるKRAS遺伝子変異の検出にこれまでERCPで得られた純膵液が用いられてきたが,近年では,比較的低侵襲なEUSやEGDで得られる十二指腸液や,EUS-FNAで採取した膵囊胞液が分子生物学的解析に用いられるようになっている.また,単一および複数マーカーの検出には,高感度な先進的解析法が用いられる様になり,十二指腸液サンプルを用いて,膵悪性腫瘍の早期発見や前がん腫瘍のリスク層別化を単一マーカーで高感度に行うことが可能とする報告があり,また,複数のマーカーを同時に検出する技術の進歩により,囊胞性膵腫瘍の鑑別も可能となってきた.注意点としては,臨床ガイドラインではEUS-FNAによる膵囊胞液,ERCPによる膵液サンプリングはそれぞれ実臨床では推奨されておらず,経験豊富な施設で行うように記載され,十二指腸液のサンプリングはガイドラインに記載されていないことである.検体の取り扱いの改善やマーカーの組み合わせにより,近い将来,膵液検体を用いた分子マーカーが実臨床で使用されるようになるかもしれない.

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© 2023 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
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