応用生態工学
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原著論文
本梅川におけるノウルシ分布の経年変化と撹乱要素との関係
丹羽 英之堀 正樹
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2020 年 23 巻 1 号 p. 37-46

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抄録

氾濫原の撹乱依存種を保全するためには,撹乱依存種の個体数の変化や生育環境などの知見をもとに保全計画を立てる必要がある.本研究は,4 年間のノウルシのパッチ動態および撹乱要素の生態学的な閾値を明らかにすることを目的とした.淀川水系の桂川の 2 次支川である本梅川の約 6.3 km を対象地とした.2016 年から 2019 年の UAV による空撮画像を使用した.画像判読により, ノウルシの分布,冠水範囲,草刈り範囲,火入れ範囲の経年データを作成した.GIS の空間解析機能を用い,ノウルシと 3 つの撹乱要素の包含関係を解析し,ノウルシのパッチの面積を集計した.ノウルシの合計パッチ面積は 2016 年の 285 m2 から 2018 年の 236 m2 に減少したが,2019 年は 298 m2 に増加し 2016 年を超えた.新出パッチ面積と拡大パッチ面積がともに最大であったために,2019 年の合計パッチ面積が最大となった.4 年間の経年調査結果から,本梅川のノウルシ個体群は持続していると考えられる.しかし,出水の頻度や規模によっては減少することが示唆された.自然撹乱である冠水に関しては,3 年間で 1 回は冠水する立地,人為撹乱である草刈りに関しては,時期Ⅳ(7 月上旬)に毎年草刈りされる立地が重要なことが明らかになった.ノウルシと 3 つの撹乱要素との解析結果から,ノウルシの生育適地を抽出することができた.

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© 2020 応用生態工学会
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