2023 年 65 巻 5 号 p. 448-453
症例は42歳,女性.貧血を契機に近医で内視鏡検査を施行され,多発胃ポリープを指摘された.上部消化管内視鏡検査では胃全体にポリープが密生し,前庭部にポリープ集簇による隆起形成を認めた.当初は多発胃過形成性ポリープが原因の貧血として経過観察の方針となった.経過観察中に前庭部の隆起は経時的な増大傾向を示し,生検で腺癌の合併が疑われたため,胃全摘術を施行された.切除標本の病理組織検査で早期胃癌を合併した若年性ポリポーシス症候群と診断された.貧血や低アルブミン血症を認める胃限局型若年性ポリポーシス症候群では胃癌が発生しやすいとされる.しかし併存する癌の診断は困難なことが多く,予防的胃全摘術も考慮される.