2024 年 66 巻 2 号 p. 191-206
ESDは早期の消化管腫瘍に対する一括切除術として確立されている.一方でESDを含む内視鏡的切除術(Endoscopic resection:ER)後の出血,穿孔,その他の有害事象の予防法は未だ確立されていない.ER後粘膜欠損部の閉鎖には汎用クリップを用いることが多い.近年では開閉可能なクリップや,よりサイズの大きいクリップも開発されている.またOver-The-Scope Clip(OTSC)システムは,一度内視鏡を抜去する必要があるが,専用デバイスを装着することで確実な欠損閉鎖が可能である.糸やリングが装着されたクリップを用いて欠損の辺縁同士を近接させ,最終的にクリップで欠損を閉鎖する方法も考案されてきた.
汎用クリップは把持力やそのサイズが限られているため,留置スネアを用いた閉鎖術,Endoscopic ligation with O-ring closure(E-LOC),Reopenable-clip over the line method(ROLM)などの方法が開発されている.
最近は内視鏡的全層切除(Endoscopic full-thickness resection:EFTR)後の全層欠損に対する閉鎖術も多く報告されている.返しのついた糸と彎曲針による内視鏡的手縫い縫合法(endoscopic hand-suturing:EHS),Overstitch,Helix tacking systemなど,欠損閉鎖のための特殊デバイスも開発されている.これらの閉鎖法や特殊デバイスは内視鏡的止血術や穿孔閉鎖,急性/慢性期の瘻孔閉鎖などに応用されている.技術革新により欠損閉鎖の成功率は高くなっているが,ER後の偶発症を予防するためには,これらの内視鏡的閉鎖術の簡略化,及び普及が課題である.