日本消化器内視鏡学会雑誌
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66 巻, 2 号
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総説
  • 松崎 一平, 榎原 毅, 藤城 光弘
    2024 年 66 巻 2 号 p. 119-128
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
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    近年,不自然な同一拘束姿勢や頻回な手首のひねり動作を余儀なくされる内視鏡医の筋骨格系障害(musculoskeletal disorders;MSDs)が注目されている.MSDs有病率と罹患部位の特徴や従事時間,内視鏡環境,内視鏡医の背景要因など多岐にわたるリスク因子の報告を紹介する.また,リスク軽減戦略として知られているHierarchy of Controlsの考え方,人間工学的対策を解説し,多様なステークホルダとの連携による包括的アプローチにて内視鏡現場を改善させるため内視鏡と人間工学分野の動向を読者と共有する.本総説を多くの消化器内科医が長く安全に内視鏡診療に従事するための手引きとして頂きたい.

  • 向井 俊太郎, 土屋 貴愛, 糸井 隆夫
    2024 年 66 巻 2 号 p. 129-143
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
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    膵仮性囊胞や膵炎後の被包化壊死に対して,まず低侵襲な超音波内視鏡下ドレナージを行い,必要に応じて内視鏡的ネクロセクトミーを行う内視鏡的ステップアップ・アプローチによる経消化管的治療が行われている.専用の大口径メタルステントの普及や追加内視鏡ドレナージテクニックにより,多くは内視鏡治療単独で治癒可能となってきた.しかし骨盤腔まで及ぶ巨大な病変に対しては,内視鏡治療に固執することなく,経皮的アプローチや外科手術も考慮した広い視野での治療戦略が必要となる.本稿では,膵仮性囊胞・被包化壊死に対する内視鏡治療の進歩と現状について概説する.

症例
  • 芥川 加代, 芥川 剛至, 岡田 倫明, 渡邊 聡, 後藤 祐大, 森 大輔, 江﨑 幹宏
    2024 年 66 巻 2 号 p. 144-150
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
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    患者は80歳,女性.心窩部痛と血性嘔吐を主訴に来院した.内視鏡検査では切歯より30cmの胸部中部食道から胃側に向かって境界明瞭な全周性の潰瘍を連続性に認め,35cmの部位で高度狭窄をきたしていた.骨粗鬆症に対して3年前からミノドロン酸50mgが処方されており,ビスホスホネート(Bisphosphonate:BP)製剤を服用した5日後から症状が出現していたためBP製剤による薬剤起因性食道炎と診断した.入院10日目の内視鏡検査では食道潰瘍および狭窄は治癒していた.自験例は高度の炎症性狭窄をきたした稀な薬剤起因性食道炎であったが,自然経過の中で狭窄に対する治療介入を行うことなく高度狭窄の速やかな改善を観察できた貴重な症例と考えられた.

  • 住谷 秀仁, 山形 拓, 菅野 良秀, 大平 哲也, 原田 喜博, 田中 恵, 嶋田 奉広, 柿田 徹也, 澤井 高志, 伊藤 啓
    2024 年 66 巻 2 号 p. 151-156
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
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    症例は49歳女性.EGDで胃前庭部に未分化型癌と,十二指腸下行部から上行部に粘膜出血を伴う12cm大のリンパ管腫を認めた.経過中,十二指腸リンパ管腫からの出血により高度貧血を生じた.胃癌に対する幽門側胃切除の消化管再建をBillroth-Ⅱ法とすることで,十二指腸リンパ管腫への食餌刺激や胃酸曝露を避け,膵頭十二指腸切除を要する病変摘除は行わなかった.術後,臨床的,内視鏡的にも十二指腸リンパ管腫からの出血の兆候は消失した.

  • 西尾 綾乃, 高橋 索真, コルビン ヒュー俊佑, 田中 盛富, 石川 茂直, 和唐 正樹, 安藤 翠, 中村 聡子, 所 正治, 稲葉 知 ...
    2024 年 66 巻 2 号 p. 157-162
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
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    症例は64歳の男性.以前から軟便を自覚していた.EGDにて十二指腸に乳白色液の貯留を認めた.十二指腸からの生検にて粘膜表面に鎌状や洋梨状の物体を認め,ランブル鞭毛虫が疑われた.十二指腸液および便の鏡検,分子解析によりassemblage A型のランブル鞭毛虫症と診断した.メトロニダゾール750mg/日を7日間投与し,軟便は消失した.1年後のEGDでは十二指腸の乳白色液の貯留は認めず,便および十二指腸液の鏡検,十二指腸からの生検で虫体は認めず,駆虫成功と判断した.EGD時に十二指腸に乳白色液の貯留を認めた場合は,ランブル鞭毛虫症も鑑別に挙げ,積極的な生検や十二指腸液の鏡検を行うことが望まれる.

  • 播磨 博文, 森 健治, 作田 美穂, 川野 道隆, 花園 忠相, 高見 太郎
    2024 年 66 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
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    症例は66歳,男性.閉塞性黄疸を指摘され当科を紹介受診した.血液検査では血清IgG4値の上昇を認めた(262mg/dl).造影CTでは肝門部胆管に腫瘤像を認めた.膵腫大は認めなかった.ERCP下の経乳頭的胆管生検では腫瘍細胞を認めなかったが,IgG4免疫染色も陰性であり,確定診断に至らなかった.確定診断目的で肝門部胆管の腫瘤に対しEUS-FNAを施行した.EUS-FNAの病理組織検査ではIgG4陽性形質細胞の間質浸潤を認め,IgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-related sclerosing cholangitis:IgG4-SC)の診断に至った.自己免疫性膵炎を伴わない肝門部型のIgG4-SC(isolated proximal-type IgG4-SC)は胆管癌との鑑別が困難な疾患であり,癌と診断されて外科手術が行われることもある.今回われわれはEUS-FNAが診断に有用であったisolated proximal-type IgG4-SCの1例を経験したため報告する.

Video Communication
手技の解説
  • 畑森 裕之, 由雄 敏之, 藤崎 順子
    2024 年 66 巻 2 号 p. 172-180
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
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    食道癌術後縫合不全は食道癌手術の大きな合併症の1つである.まずは抗菌薬投与,創部のドレナージによる保存的加療が行われるが,瘻孔形成を来し治療に難渋する症例もしばしば経験する.われわれは食道癌術後縫合不全の瘻孔形成に対してポリグリコール酸(polyglycolic acid:PGA)シートとフィブリン糊による内視鏡的瘻孔充填術を施行しており,良好な成績を得ている.PGAシートを瘻孔に充填する際に,PGAシートを事前にフィブリノゲン溶液に浸してから充填し,最後にトロンビン溶液を散布することで高い瘻孔閉鎖率が得られており,手技の重要なポイントと考える.

  • 橋本 陽, 引地 拓人, 中村 純
    2024 年 66 巻 2 号 p. 181-190
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
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    胃粘膜下病変(subepithelial lesion:SEL)から病理検体を得る手段としてEUS-FNAが普及している.胃SELのEUS-FNAは,gastrointestinal stromal tumor(GIST)などの間葉系腫瘍が主たる穿刺対象であるため,免疫染色を行うための充分量の検体が必要である.しかし,胃SELのEUS-FNAは,穿刺時に胃壁と共に病変が逃げてしまうことや病変自体が硬く穿刺が困難であるなどの要因で,検体採取が難しい場合がある.したがって,手技の工夫が重要であり,door-knocking methodやfanning techniqueといった基本的穿刺法のほか,スロープル法やwet suction法という新たな吸引法が注目されている.しかし,これらの方法でも胃SELから充分量の検体を採取することは難しいことが課題であった.そこに登場した革命は,FNB(fine-needle biopsy)針と直視コンベックス型EUSスコープである.FNB針は,FNA針の先端の形状を工夫することで量と質のよい検体の採取に貢献できるようになり,近年では20mm未満のSELにおいても,良質な検体採取が報告されている.また,直視コンベックス型EUSスコープは,病変に近接することが容易であるため,これまで検体採取に難渋していた胃体部大彎の病変においても有用性が報告されている.なお,rapid on-site cytological evaluation(ROSE)の併用は,評価可能な検体が採取されているかの判断に有用であるが,FNB針を用いた場合にはROSEを行わなくても充分量の検体が採取できるとの報告もある.今後も機器や手技を工夫することで,胃SELにおけるEUS-FNAの診断能が向上することが期待される.

資料
  • 野村 達磨, 杉本 真也, 天満 大志, 大山田 純, 伊藤 圭一, 亀井 昭
    2024 年 66 巻 2 号 p. 191-206
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
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    ESDは早期の消化管腫瘍に対する一括切除術として確立されている.一方でESDを含む内視鏡的切除術(Endoscopic resection:ER)後の出血,穿孔,その他の有害事象の予防法は未だ確立されていない.ER後粘膜欠損部の閉鎖には汎用クリップを用いることが多い.近年では開閉可能なクリップや,よりサイズの大きいクリップも開発されている.またOver-The-Scope Clip(OTSC)システムは,一度内視鏡を抜去する必要があるが,専用デバイスを装着することで確実な欠損閉鎖が可能である.糸やリングが装着されたクリップを用いて欠損の辺縁同士を近接させ,最終的にクリップで欠損を閉鎖する方法も考案されてきた.

    汎用クリップは把持力やそのサイズが限られているため,留置スネアを用いた閉鎖術,Endoscopic ligation with O-ring closure(E-LOC),Reopenable-clip over the line method(ROLM)などの方法が開発されている.

    最近は内視鏡的全層切除(Endoscopic full-thickness resection:EFTR)後の全層欠損に対する閉鎖術も多く報告されている.返しのついた糸と彎曲針による内視鏡的手縫い縫合法(endoscopic hand-suturing:EHS),Overstitch,Helix tacking systemなど,欠損閉鎖のための特殊デバイスも開発されている.これらの閉鎖法や特殊デバイスは内視鏡的止血術や穿孔閉鎖,急性/慢性期の瘻孔閉鎖などに応用されている.技術革新により欠損閉鎖の成功率は高くなっているが,ER後の偶発症を予防するためには,これらの内視鏡的閉鎖術の簡略化,及び普及が課題である.

内視鏡室の紹介
最新文献紹介
  • 平岡 佐規子
    2024 年 66 巻 2 号 p. 216
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/02/20
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    【背景】内視鏡的寛解と組織学的寛解は,炎症性腸疾患(Inflammatory bowel diseases:IBD)の治療目標であり,良好な長期転帰と関連している.そこで,臨床的寛解期にあるIBD患者において,腸管のバリア治癒は,内視鏡的寛解および組織学的寛解と比較し,長期的な疾患経過の予測が可能であるか前向きに比較した.

    【方法】ベースライン時に,臨床的寛解IBD患者にileocolonoscopyを行い,共焦点内視鏡による腸管バリア機能の評価を行った.内視鏡的,組織学的活動性,バリア治癒は確立されたスコアで前向きに評価された.フォローアップ期間中,患者は臨床的疾患活動性と主要有害転帰(major adverse outcomes:MAO)の発生,すなわち,疾患の再燃,IBDに関連した入院または手術,ステロイド(全身投与),免疫抑制剤,低分子化合物,生物学的製剤の開始または増量,につきモニターされた.

    【結果】クローン病(Crohnʼs disease:CD)100例と潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)81例の計181例を解析対象とした.平均追跡期間CD 35カ月,UC 25カ月において,CDの73%,UCの69%が少なくとも1回のMAOを経験した.内視鏡的寛解のIBD患者では,内視鏡的活動性の患者と比較して,「MAO無し」の率が有意に高かった.さらに,組織学的寛解はUCの「MAO無し」を予測したが,CDでは予測しなかった.バリア治癒は,UCとCDの両方で「MAO無し」を予測する上で,内視鏡的および組織学的寛解よりも優れていた.

    【結論】臨床的寛解のIBD患者において,バリア治癒は疾患の悪化リスクの低下と関連しており,内視鏡的および組織学的寛解と比較して優れた予測能を示した.バリア機能の解析は,臨床試験において将来の治療ターゲットとして考慮されるかもしれない.

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