日本消化器内視鏡学会雑誌
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資料
大腸内視鏡検査前処置における排便性状を人工知能によって評価するスマートフォンアプリケーション
稲場 淳新村 健介 松崎 博貴竹下 修由若林 将史砂川 弘憲中條 恵一郎村野 竜朗門田 智裕池松 弘朗矢野 友規
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2025 年 67 巻 10 号 p. 1594-1604

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抄録

【目的】大腸内視鏡検査は前癌病変の早期発見と切除のための重要なスクリーニング法である.十分な質が保たれた大腸内視鏡検査を実施するためには前処置時の排便性状を適切に評価しなくてはならない.本研究の目的は,大腸内視鏡検査前処置時の排便性状を評価する人工知能モデルが搭載されたスマートフォンアプリケーション(アプリ)の開発,およびアプリを使用して前処置を実施した際に十分な質が保たれた大腸内視鏡検査が実施できるかどうかを検証することである.

【方法】最初にAIモデルを構築するためにわれわれの施設にて排便画像を収集し,それぞれの排便画像をグレード1(固形または泥状の便),グレード2(混濁した水様便),グレード3(透明な水様便)に分類した.排便性状(グレード1-3)を評価するAIモデルを構築し交差検証法によって内部検証を実施した.続いて,われわれの施設でこのAIモデルを搭載したアプリを使用して大腸内視鏡検査の質に関する前向き観察研究を実施した.主要評価項目はアプリを適切に使用できた患者における,Boston Bowel Preparation Scale(BBPS)が6点以上を達成できた割合とした.

【結果】AIモデルの平均正診率はグレード1,グレード2,グレード3についてそれぞれ90.2%,65.0%,89.3%であった.前向き観察研究では106名の患者が登録され,BBPSが6点以上であった患者の割合は99.0%(95%信頼区間:95.3-99.9%)であった.

【結論】開発したアプリを使用して実施された大腸内視鏡検査においてBBPSが6点以上の割合は設定した期待値を上回った.このアプリは臨床現場における質の高い大腸内視鏡検査の実施に貢献できる可能性がある.

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