2025 年 67 巻 4 号 p. 328-335
【背景と研究の目的】食道扁平上皮癌(squamous cell carcinoma;SCC)のリスクを,食道を刺激するヨード染色を用いずに内視鏡所見で予測することは有益である.以前のレトロスペクティブ研究で,われわれは,narrow band imaging(NBI)/blue laser imaging(BLI)で認められる食道粘膜の多発拡張血管の小集簇(multiple foci of dilated vascular areas;MDV)が,ヨード不染帯と関連し,食道扁平上皮癌の予測因子となりうることを明らかにした.この前向き研究では,MDVと異時性食道扁平上皮癌との関連を検討することを目的とした.
【対象および方法】食道扁平上皮癌に対する内視鏡的切除歴のある患者を対象とした.まず,初回内視鏡検査時にNBIまたはBLIを用いてMDVの評価を行った.その後,内視鏡的サーベイランスにより異時性食道扁平上皮癌の有無を調べた.MDVの数と異時性食道扁平上皮癌の発生率との関連を検討した.
【結果】2018年2月から2019年5月までに206例が登録され,201例が解析対象となった.患者は2022年10月まで追跡された.内視鏡追跡期間の中央値(四分位範囲)は1,260(1,105~1,348)日であった.2年後の異時性食道扁平上皮癌の発生率は,MDV≦4の患者で7.1%,MDV≧5の患者で13.9%であった(P<0.01).多変量解析では,MDVは異時性食道扁平上皮癌の独立した予測因子であり,オッズ比(95%信頼区間)は2.37(1.06-5.31)であった.
【結論】MDVは異時性食道扁平上皮癌のリスクを層別化する有用な予測因子である.
【臨床試験番号】UMIN000031342.