2026 年 68 巻 4 号 p. 308-314
症例は46歳男性.心窩部痛を主訴に受診した.上部消化管内視鏡検査で,胃体下部後壁の50mm大の潰瘍を伴う境界不明瞭な0-Ⅲ+Ⅱc病変と,穹窿部の10mm大の褪色調の0-Ⅱb病変を認めた.両病変間には正常粘膜が存在しており,連続性のない独立した病変であった.生検からそれぞれが印環細胞癌であると診断し,胃全摘術を施行した.手術検体の病理検査では,既知の病変以外にも胃全体にわたって巣状に独立した粘膜内に留まる印環細胞癌が無数観察された.若年発症であり,特徴的な病理組織所見から遺伝性びまん性胃癌を非常に強く疑ったが,遺伝子検査の同意が得られず,外来で経過観察中である.