2026 年 68 巻 6 号 p. 1192-1201
【目的】Spastic esophageal disorders(SED)には,Type Ⅲ食道アカラシア,遠位食道攣縮(distal esophageal spasm:DES),ジャックハンマー食道(hypercontractile esophagus:HE)が含まれる.しかし,いずれもまれな疾患であり,これらに対するPOEMの有効性と安全性は十分に確立されていない.本研究では,SEDに対するPOEMの臨床成績および最適な治療戦略を評価することを目的とした.
【方法】2014年3月から2023年12月にSEDに対してPOEMを施行した患者を対象に後方視的解析を行った.Type Ⅲ食道アカラシアでは,食道の異常収縮部から胃噴門部まで筋層切開を行い,DESおよびHEでは食道の異常収縮部のみ筋層切開し下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)を温存する方法,または食道異常収縮部から胃側まで筋層切開を行った.手技の詳細,technical およびclinical success,偶発症,POEM後の胃食道逆流症(Gastroesophageal reflux disease:GERD)の発生率を評価した.Clinical successは,Eckardtスコア≦3と定義した.
【結果】研究期間内に2,938例のPOEMが行われ,そのうち106例(3.6%)がSEDに対して施行した.対象は,Type Ⅲアカラシア58例(54.8%),DES 24例(22.6%),HE 24例(22.6%)であった.Technical successは100%で,clinical successは治療2〜3カ月後で98.1%,治療1年後で92.6%であった.びらん性食道炎は2〜3カ月後に27.7%,1年後に16.1%で認められた.DESおよびHEに対するLES温存POEMは,胃側筋層切開まで行う従来のPOEMと同等の有効性を示し,GERD発症率の低減傾向がみられた.
【結論】POEMはSEDに対して有効な治療である.DESおよびHEに対しては,LES温存POEMが有効であり,GERDリスクを軽減しうる有望な治療戦略であると考えられる.