抄録
食道癌の口側浸潤の境界を術前に診断することは照射範囲の決定,切除線の決定に重要である.食道癌の口側病変を内視鏡所見から小隆起,皺襞様隆起,びらん,その他を平坦性病変と分類し,これらの病変部の病理組織学的検討をおこない,悪性口側病変の内視鏡像を明らかにした.更に口側浸潤診断の補助診断法として,メチレンブルー,トルイジンブルー,ルゴール氏液をもちいた色素剤撒布法,新たに考案した拡大食道鏡FES-ML(25倍率)による拡大観察,粘膜下癌浸潤診断に有棘針をもちいた穿刺細胞診を検討した.色素剤撒布法では病変部の詳細な観察および境界の明瞭化に有効であった.拡大食道鏡による観察は正常毛細血管網の消失や乱れから癌露出部,上皮下癌浸潤の診断に有効であり,びらん,小隆起の鑑別にも有効であった.有棘針による細胞診は病変部への狙撃性が高く,採取される細胞集団も多く,粘膜下癌浸潤の診断に有効であった.