抄録
消化管内視鏡検査法の申にあって,小腸内視鏡検査法は著しく立遅れていることは否めない.現在までに小腸内視鏡器械としてpush式,rope-way式およびsonde式の3方式の小腸fiberscopeが開発されている. 著者らは最近6年間に73例に対してsonde式小腸fiberscope(SSIF)を用いて内視鏡検査を試みたが,ことにscopeの蛇管部をより柔軟に改良することによって,その挿入性は著しく向上がみられ,TypeIIIとTypeIVを用いた検査では,深部小腸への挿入は44~46%に可能で,その所要時間も74~89分間と短縮することができた.本器種による検査では被験者に与える苦痛が少ないことが特徴であるが,その反面,アングル機構や生検機構は犠牲になっている.そこでscopeの先端部にカブを取り付けたり,吸引装置によって腸液を採取することによって,これらの欠点を補おうと努めている. ともあれ,現段階ではpush式,rope-way式およびsonde式の3方式の小腸fiberscopeのいずれの器種も完壁なものであるとは言い難く,病変の性状や発生部位に応じて,これらの器種を使い分けるべきであろう.ことにSSIFはpush式小腸fiberscopeの到達しえない場所に発生した狭窄を呈する小腸病変や,小腸からの出血が疑われ重篤な状態に陥った患者の出血源の検索のためには適応があると考えられる.