抄録
Push式小腸ファイバースコープを深部小腸まで挿入し難いもっとも大きな理由は,ファイバースコープを押し進めてゆこうとすると胃内でloopが形成されるためである.これを解決する方法として,今回われわれは,sliding tubeを十二指腸下行脚まで挿入する手技を開発した. 本法を用いてSIF-Bの挿入を試みた32例のうち,スコープが小腸係蹄内に反時計方向に挿入された24例は,十二指腸空腸屈曲部から平均80cm,最高116cmの部位まで挿入出来た.一方,.時計方向に挿入された8例の場合は抵抗があり,平均41cm,最高65cmで,それ以下への挿入は困難だった.本法は,所要時間は平均約25分位と短く,通常の内視鏡検査の前処置で施行出来る実用的方法である.利点は,SIF-Bを用いてsliding tubeを十二指腸下行脚まで挿入した後は,SIF-Bに替えて柔らかく長い深部挿入用小腸ファイバースコープを再挿入出来ることである.したがって,今後の深部挿入用ファイバースコープの改良によっては,さらに深部の小腸への挿入が出来る可能性がある.