抄録
1970年1月から1978年6月までに手術した大腸進行癌は327例で,術前に内視鏡生検を施行したのは179例であった.1月生検陽性率は162例(90.5%)であった.潰瘍型の癌,腸管屈曲部の癌,全周性の癌に陽性率が低かった.潰瘍型の肛門側辺縁は組織学的に,(代)癌組織が完全に非癌粘膜に被われるもの,(B)癌組織が一部露出するもの,(C)癌組織が完全に露出するもの,の3つに分類できた.これに従って16例の潰瘍型陰性例を分けると(有)が6例,(B)が4例,(C)が5例,壊死巣1例でほぼ均等に分布し(A)に陰性例が多いとはいえなかった.生検陽性率の高い腫瘤型の癌に1例陰性例があったがその肛門側辺縁はpapillary adenomaに被われ陰性となった.生検切片数をみると陰性例17例中7例が1個しか採取していなかった.以上より生検陰性例を減らすに,は少なくとも2個以上,部位を離して癌の周堤の頂上で採取することが重要と考えられた.また擦過細胞診を併用することも有用である.