抄録
われわれは1,201例・2,013病巣の胃ポリープを内視鏡的に観察し,そのうち52例89病巣については5年~12年にわたり,内視鏡的および組織学的に経過観察を行ない,次の成績をえた (1)胃ポリープ発見率は年々増加することがわかり,さらに年代別では高齢者になるに従い出現頻度が高くなると共に形態学的にも亜有茎性または有茎性ポリープの相対的増加が認められた。胃ポリープの発生部位と胃壁との関係ではA部(胃1/3下部)では大轡に,M部(胃1/3中部)では後壁に,C部(胃1/3上部)では前壁に多くみられた. (2)経過観察では,個数変化群は52例中20例(38.5%),そのうち16例は増加,2例に消退,2例に脱落消失を認めた.形の変化した群は89病巣中29個(32.4%)にみられ,経過を追及すると,持続的増大するもの(6個),増大・静止・縮少をくり返すもの(19個),消退したもの(2個),'脱落消失したもの(2個)もあった.発育期間では個々で著しい差があったが,山田1型から豆型まで平約2年8カ月,1型から皿型へは平均4年7カ月,III型からIV型へは平均1年6ヵ月と比較的長期間を要していた. (3)組織学的には過形成性ポリープは2,013病巣中1,882個(93.5%)で,腺腫が131個(6.5%)であった.さらに経過観察しえた89病巣中3個(3.4%)に癌化がみられ,そのうち2個は初回検査時には腺腫であり,1個は過形成性ポリープであった.